メニュー

糖尿病革命 インスリン注射が不要になる?幹細胞治療の最前線

[2025.09.25]

はじめに

 

こんにちは。
新橋消化器内科・泌尿器科クリニック、理事⻑の伊勢呂です。最近、⽇本経済新聞で「インスリン注射が不要になるかもしれない糖尿病治療」が紹介されました。私⾃⾝も記事を読んで胸が⾼鳴りました。糖尿病治療に⽇々向き合っている1 ⼈の医師として、この研究が持つ可能性は⾮常に⼤きなものだと考えます。
糖尿病といえば「⼀⽣インスリン注射が必要」というイメージがありますね。しかし今、⾃⼰脂肪由来幹細胞を使った最先端の治療法が研究段階に⼊り、未来の治療として現実味を帯びてきています。本⽇は、この話題をわかりやすくご紹介し、当院での取り組みについてもあわせてお伝えしようと思います。

 

糖尿病とは

糖尿病とは⾎糖値が慢性的に⾼くなってしまう病気です。⾎液中の糖が増える ことで⾎管や神経が傷つき、脳梗塞・⼼筋梗塞・網膜症による失明・腎不全に よる透析・⾜の壊疽(切断)といった重い合併症を招きます。
⽇本では5〜6 ⼈に1 ⼈が糖尿病または予備群といわれ、まさに国⺠病ともい える存在です。
そんな糖尿病には主に2 つのタイプがあります。

  • 1 型糖尿病:⾃⼰免疫の異常で膵臓のインスリンを作る細胞が破壊さ れ、インスリンをつくれなくなる病気。⽣涯にわたりインスリン注射が 必要となります。
  • 2 型糖尿病:⽇本⼈に最も多いタイプの糖尿病。最初は膵臓が⼀⽣懸命 インスリンを出して⾎糖を下げようとしますが、⽢いものや炭⽔化物の 摂り過ぎ、運動不⾜などが続くと膵臓が疲れてしまい、だんだんインス リンを⼗分に出せなくなります。さらに、体の細胞がインスリンを受け 取りにくくなるため、⾎糖値が下がりにくくなってしまいます。初めの うちは飲み薬で治療できますが、症状が進むと膵臓の働きが弱り、最終 的にはインスリン注射が必要になることもあります。

インスリン注射が不要に?幹細胞で「第2 の膵臓」をつくる治療]

現在注⽬されているのが、⾃⼰脂肪由来幹細胞を使った糖尿病の再⽣医療で す。徳島⼤学の池本教授らが進める研究では、患者さん⾃⾝の⽪下脂肪から採 取した幹細胞を利⽤してインスリンを分泌する新しい細胞をつくり出し、それ を体内に移植するといった最新の治療法です。

治療の仕組み

  1. ご本⼈の⽪下脂肪から幹細胞を採取
    お腹から少量の脂肪を採り出し、そこに含まれる幹細胞を分離します。
  2. インスリン産⽣細胞に分化
    分離された幹細胞を培養する過程で特別な栄養分や成⻑因⼦を加えると、膵臓のβ 細胞(インスリンを作る細胞)と同じような性質を持つ 細胞に変化します。β 細胞は⾎糖値が上がったときにインスリンを分泌する「膵臓のインスリン⼯場」のような存在です。 糖尿病ではこのβ 細胞が壊れたり疲れて働けなくなったりなるため、 ⼗分なインスリンが出せなくなります。そこで幹細胞をβ 細胞に似た 細胞へと分化させることで、再びインスリンを出せるようにするのです。こうして作られた細胞を IPC(Insulin Producing Cell:インスリン産 ⽣細胞) と呼びます。
  3. 体内へ移植
    出来上がったインスリン産⽣物質(IPC)をお腹にある「腸間膜」に移 植します。腸間膜は⾎流が豊富で細胞が定着しやすい場所とされています。
  4. ⾎糖値に応じてインスリンを分泌
    移植された細胞は⾎糖値の変化を感知し、必要なときにインスリンを分泌します。膵臓が⼗分に働かなくても、体内で「第2 の膵臓」のように機能するのです。

動物実験と臨床試験

動物実験では、⾎糖値が正常化し、安定してインスリンが分泌されることが確 認されています。⾃分の細胞を使⽤するため、副作⽤や拒絶反応も少なく、安全性が⽰されています。
現在は1 型糖尿病を対象にした臨床試験が始まっており、今後の成果が待たれ ています。将来的には2 型糖尿病にも応⽤が広がるのではと考えられています。

実⽤化までの課題

この幹細胞治療が⼀般診療に広がるまでには、まだ時間がかかります。⼈での 安全性と有効性を確⽴する必要があり、実⽤化までは10 年以上かかる可能性 があります。また、当初は⾼額な治療費も予想されます。
しかし、もし普及すれば、毎⽇のインスリン注射から解放される未来がやってくるでしょう。糖尿病患者さんにとって⽣活の質が⼤きく向上する可能性があり、「糖尿病⾰命」とも呼べる画期的な進歩です。

新橋消化器内科・泌尿器科クリニックで⾏っている幹細胞治療

当院では、点滴による「2 型糖尿病に対する⾃⼰脂肪由来幹細胞治療」を導⼊しています。 患者さん⾃⾝の⽪下脂肪から幹細胞を取り出して培養し、点滴で体内に戻す治療です。幹細胞は傷ついた細胞や臓器の機能を修復・再⽣する⼒を持ち、膵臓 のインスリン分泌機能を改善したり、インスリン抵抗性をやわらげたりする効果が期待できます。 薬や注射で⼗分なコントロールができなかった⽅にとって、新しい治療の選択肢となり得ます。なお、1 型糖尿病に対しては現在も研究段階であり、適応外となっています。

まとめ

糖尿病はこれまで「⼀度発症したら⼀⽣付き合う病気」と考えられてきました。しかし、幹細胞研究の進歩により、「注射のいらない⽣活」が夢ではなく 現実に近づいています。
私⾃⾝、⽇々の診療で「注射を続けるつらさ」や「合併症への不安」を伺うたびに、患者さんの負担を少しでも軽くしたいと強く感じていました。今回ご紹介した研究は、まだ実⽤化まで時間がかかりますが、必ず糖尿病治療の未来を 変える⼤きな⼀歩になるでしょう。そして現時点でも、私たちにはできることがあります。当院で提供している幹細胞治療は、すべての⽅に適応できるわけ ではありませんが、新しい可能性を求める患者さんにとって光となり得ます。 糖尿病は誰にとっても⾝近な病気です。ご⾃⾝やご家族で気になることがあれば、ぜひお気軽にご相談ください。私たちと⼀緒に、より良い未来を⽬指して歩んでいきましょう。

HOME

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME